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『龍神』

最終更新日:2015年3月1日

阿曽の民話

 阿曽は鉢伏山のすそが海まで広がっている傾斜のきつい土地柄になっている。いつも洋々と広がる日本海と東浦連峰にはさまれたこの地はのどかな風景をみせていた。そんなある日のこと、今はむかし話となったが、田畑に精を出して働いて今日は豊作かのーと伸びかかっている稲の手入れをしているものがあっちこっちにみられた。「オーイ 雨や。」「えー雨じゃのー」と、またクワを手にした。しばらくしても止むようすもなく、しだいにひどくなってきた。「こりゃーあかん」とみんな家路を急いだ。雨は天と地を一本の細い線でむすんだような糸を引いたような雨となりゴロゴロと雷もなりだした。稲のことが心配になってきたころ、「たいへんだー」「にげろー」と口々にさけぶものがいた。外に飛び出してみると、鉢伏山のあたりが水煙をふき上げ大波が坂にそっておしよせてくるところだった。
 鉢伏山の山脈がくずれダムのようになり、そのダムもくずれて一気に大水が村めがけて流れこんできた。神社や寺に逃げこんだものは命をすくわれたものの大半は家をつぶされ、こう水に流されていた。しかし、それよりこわいものが流れてきた。山からくずれて落ちた大木が何10本と流れてきたこと。何と何億貫もあるような岩が海めがけてころげ落ちてきたのには胆をつぶすどころではなかった。根こそぎ家が海に流れ、「オッカー オッカー」と屋根にすがって、母にたすけをもとめる様は地獄図であった。そのとき、そのこどもの声をききつけ、助けるかのようにあらわれたのが龍である。鉢伏山の谷間あたりからものすごい目を光らせ、「アリャ何じゃ」という間に龍は日本海めがけて空を飛ぶようにとびこんだ。家も何もかもなくなり、命も危ういときだけに、「神さま、仏さま」と龍に手を合わすのであった。あまりのおそろしさに手を合わしたのかもしれない。不思議なことに神社と寺はつぶされることなく逃げこんできた人もたすかり、信仰心の厚い人たちも命を救われたこともあって「これはあの龍神さまのおかげだ」と思うようになった。また神社に居てたすかった人は「氏神はありがたいこっちゃ」と八幡神社に手を合わした。(これを記念してこの日7月29日には毎年水害休みにし、今も神社の祭事がつづいている。)
 それから 山に1,000年、海1,000年といわれる龍は岡崎山の蛇の穴に住みついたといわれるようになってどのくらい年月がたったろうか。人の力は不思議なもの ほとんど土砂にうずもれたり、流木、流石にこわされた家々はみるかげもなく立派に復旧されていた。
 いつの頃からか、日照りで水不足になると岡崎山の龍神様に雨乞いをする行事がおこなわれるようになった。これは帆立の天馬船にのり櫓をこぐもの、大きな太鼓、一斗樽のお神酒を積んで勇壮に出る風景はみごとなものだった。女人は船にのれなかった。同じ船にのっている寺のオッサンの読教に合わせるかのように船は動き蛇の穴で変わったことを行う。お神酒をさかづきに入れ、さかづきをチャポンと蛇の穴(淡水の洞穴)におとし、うずを巻いて沈んでいくと「今年は雨がふる豊作じゃ」とよろこんだものだ。それがすむと続いている読経にのせて阿曽の海辺へもどるのだが、船出してから帰ってくるまで、村人は海辺に総出していた。かん声をあげている様は極楽図のようであった。阿曽から岡崎山の蛇の穴にいくといつも雨乞いがかなえられると伝えられるようになった。 今日では、八幡神社が利椋神社といっしょになり利椋八幡神社となっているその境内に「もも石ー海にもまれた石」を運ぶ行事が7月29日に行われ、テンゴという籠に石を積んで運ぶものや、村の青年が山車を引っぱって10俵ものもも石を境内まで運ぶ行事がつづいている。これは水害の時、少しでも台地が高い方がよいだろうとはじめたものときく。龍神の加護、神社への感謝、信仰心がこのようなかたちで今日もつづいている。また 安養寺の本堂の柱やフスマに、当時の水害による土砂の跡が今もなお黒くしみついて残っている。

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